にのだん社会保険労務士事務所

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にのだん社会保険労務士事務所だより「たすき」令和3年7月号(No.20)

【標準報酬月額の特例改定ご存知でしょうか】             

毎年7月は「健康保険・厚生年金保険被保険者算定基礎届」の提出時期となっております。(今年は7月12日が提出期限)

健康保険および厚生年金保険の被保険者および70歳以上被用者の実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないように、事業主は、7月1日現在で使用している全被保険者の3ヵ月間(4・5・6月)に支払われた報酬月額を算定基礎届により日本年金機構に届出(健康保険組合加入事業所は別途、健康保険組合にも提出)することにより、毎年1回、9月分から翌年8月分までの標準報酬月額が決定されます。これを定時決定といいます。ちなみに70歳以上被用者とは、70歳到達により厚生年金被保険者資格を喪失した後も退職せず被保険者となりうる条件で勤務している人であり、直近の給与や賞与額をもとに在職老齢年金を計算する目的で喪失後も70歳以上被用者として算定基礎届の提出が必要となります。(75歳で健康保険被保険者を喪失したあとも被保険者となりうる条件で勤務している間は70歳以上被用者の届出は必要です)

なお、定時決定とは別に随時決定(固定的賃金の変動が反映された最初の支払い月を含めた連続3ヵ月の平均額による標準報酬月額の等級が2等級以上変動した場合、3ヵ月の翌月分からの標準報酬月額の変更が決定される・【例】昇給により4月支払いの給与がアップし4・5・6月支払いを平均すると2等級以上アップした場合、7月分から随時改定として標準報酬月額が変更)により7月・8月・9月のいずれかで改定する必要がある対象者については定時決定ではなく随時決定のほうが優先されます。

以上が本来のルールですが現在、新型コロナウイルス感染症の影響による休業で令和3年4月から7月支払いまでの間に報酬が著しく低下した(固定的賃金に関わらず2等級以上下がった)場合は「特例改定用の月額変更届」を管轄の年金事務所に提出(令和3年9月末必着)することにより、変動月の4ヵ月目ではなく翌月から改定が可能となります。変動直後の保険料負担が軽減されるメリットがありますが、傷病手当金などの健康保険給付や将来の老齢厚生年金額にも影響を与えることから事前に被保険者の同意が必要となります。また休業が回復して支払われた給与を基にした標準報酬月額が2等級以上アップした場合は、固定的賃金の変動に関係なく休業回復による「特例改定用の月額変更届」の提出が必要となります。制度を理解したうえ対象となる休業が発生し、かつ被保険者さんが同意するならば特例改定の活用をぜひともご検討ください。 最後に定時決定・随時決定いずれかが提出されない場合、保険者決定により従前の標準報酬月額が職権で決定されることになりますので、期限内にご提出いただくようご注意ください。

【とある社長さんのこだわりについて】

今の世の中、日本は世界と比べてデジタル化が遅れていると言われており、社会保険労務士が行う手続きについても紙ではなくCDなどの磁気媒体、もしくは電子申請が推奨されている時代となっております。

そんな中、仕事の関係で以前相談対応したとある社長さんのこだわりについて今回ご紹介させていただきます。それは時代に逆行しているかもしれませんが従業員さんに支払う給与を全て現金で支払っているというお話でした。私自身、毎月の給与を現金で支給されていたのは大学卒業までアルバイトしていたコンビニの時が最後で25年も前の話です。給与は振り込まれるのが当たり前と思っていたので話を聞いたときは驚きでした。しかし給与計算に時間がかかろうとも、間違いがないかチェックするのが大変であっても社長さんがこだわる理由として「現金がしっかり入った給料袋を家に持って帰り、奥さんに渡したらきっと喜んでくれてご苦労様でしたと言うてくれるでしょう」また「現金で渡すことによって自分の給与がどのような総支給額や天引き額で計算されているか給与明細しっかりチェックしてくれると思うんで明細にはメッセージを書いて渡しているんです」と話されていました。

その話を聞いたあと私がもし経営者で社長さんと同じように現金で給与を渡すなら、給与明細にどのようなメッセージを書くだろうか想像しました。「〇〇君 今月も頑張ってくれてありがとう。経済状況が厳しい中、今月は何とか売り上げ前年比100%達成できました。感謝します」とか「□□さん いつもご苦労さま。最近残業が多くなってきている気がします。仕事で困っていることがあればいつでも相談ください」など私の勝手な理想であり、一人ひとりにそのような対応は現実的に不可能かもしれません。しかしデジタル化が叫ばれている中、あえてメールやチャット、ネットバンキングではなくアナログなかたちで従業員さんに日々の感謝を手渡しで伝えることができるならば、それは「物理的報酬」ではなく「精神的報酬」として従業員さんに感動と会社に対する感謝を作りだすかもしれません。私は過去の職務経験の中で「仕事楽しいなあ」「仕事辛いなあ」を何度も何度も繰り返してきました。「ありがとうやご苦労さまの言葉=精神的報酬」があれば仕事に費やす時間が何時になろうとも好きな仕事にプライドとこだわりを持って励みましたし、逆に「このままやったら会社潰れるぞ」「給料遅れるかもしれない」と聞こえるようにささやかれたことにより仕事に対しても会社に対しても愛着が湧かなくなった経験もありました。社長さんの従業員さんに対するこだわりが仕事への満足感プラス愛社精神を掘り起こし、それが企業の力を底上げする原点になるかもしれないと感じました。

最後までお読みいただきありがとうございました